fj.books における楽しいお話。荷風の小説『来訪者』について、随筆『日和下駄』
についてなどなど。新たな発見がいくつもありました。
永井荷風
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投稿者(From) 余丁町散人
件名(Subject) 永井荷風
グループ(Newsgroups) fj.books
投稿日(Date) Sat, 29 Sep 2001 23:03:54 +0900
記事ID(Message-ID)
所属(Organization) Tokyo Metallic Communications Corp. -----------------------------------------------------------------------
<japan.life.seniorに書いたものだけど、こちらの方が適当なようなので>
吾輩が隠棲する余丁町というところは、新宿の街外れにしては開発が遅れた、やや雑
然とした街で、別段とり立てて自慢するほどのものはなにもないのですが、敢えてひ
とつだけあげるとすれば、この街にふたりの明治の文人が住んだことでしょうか。坪
内逍遙と永井荷風がそうです。
このうち坪内逍遙宅跡についてはすっと前から東京都教育委員会による看板表示があ
るのですが、荷風については長らく無視されており、その旧居跡を示す表示は余丁町
のどこにもありませんでした。ところが先週ようやく「永井荷風旧居跡」との立て札
が余丁町通りに建てられたのです。逍遙に遅れること実に十数年。でも熱狂的「荷風
ファン」を自認する吾輩にとってはまことに喜ばしいことで皆様にご報告したいと思
います。(教育委員会のえらい人は荷風なんて嫌いだったのでしょうね。「教育的で
はない」ということかな)
荷風が好きな人は、ほとんど例外なく年輩者。しかも男性と言われています。吾輩も
それを信じていたのですが、この前荷風について詳しい川本三郎の講演を聴きに行っ
たとき、聴衆に若い女性が結構多かったのには驚きました。最近荷風を見直す傾向が
顕著になっていますが、年輩者ばかりでなく若い女性にも理解されるようになってい
るらしい。まさに「後生畏るべし」ですね。(もっとも、日本近代文学の三本の柱は、
鴎外、漱石、それに「荷風」であると喝破した赤瀬雅子という比較文学の先生は女性
です。何事にも例外はあります)
でも、若い女性に理解者が広がったとしてもシニア世代にとっての荷風の魅力が減る
ものではありません。今度岩波から荷風の日記『断腸亭日乗』が改めて発刊されるの
も隠然たるファンが多いことを物語っています。ともあれ、徒然なるままに荷風散人
の文章にひねもす陶然と酔いしれるのは、吾輩の至福の暇つぶしであり、生活そのも
のとなっているのです。
すこし荷風について話しませんか。
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余丁町散人 naoyuki_hashimoto@mac.com